2013年10月25日金曜日

志賀直哉『暗夜行路』

昔養蚕をしていたころの道具が今も天井裏に残っているらしい祖父母の家は、枠に入ったご先祖様の大小の写真が並んで見下ろす中の間が、まず玄関入るとすぐ迎えてくれるような、そんな古い日本家屋ですが、そこでいっしょうけんめい掃除をする夢を見ました。箒で畳を掃いたり、座布団をお日様の下で干さなくちゃ、と焦っています。この祖父母の家で遊んだときは子どものころのことで、そんなことはしたことはないのに。

ちょうど志賀直哉の『暗夜行路』を読んでいたのでそれが何か夢を見させたのかなとも思います。
とにかく悪い夢ではなかった。

マザコンで神経衰弱の時任謙作が随分遠くまで長いこと旅をしたり、引越しをしたり、放蕩を重ねるなど、鬱々とした日々の感情を描いている話。それにしても昔の人はよく手紙を書きます。それも長い長い手紙を。

志賀直哉が『暗夜行路』の執筆を始めたのが大正元年、29歳のときで、完成したのは昭和12年、54歳のときと年譜にはあります。その間にも他の作品は手がけているものの、ずっと時任謙作の人生を気にかけていたわけで、その事実にまた静かに心動かされました。


 

2013年10月22日火曜日

シトカ 2013

南東アラスカのシトカに9月末に行ってきました。Welcome back...
初めて訪れたときの、見るものすべてが”アラスカ”として興奮したときは過ぎ、静かな染みとおるような時間です。ああハクトウワシがいる、あの針葉樹の森に深く響き渡る声は体が知っている。でも、こんなところまで、という森の中の細い流れで鮭がばしゃばしゃしているのを思いがけず見つけて座り込んでしばらく観察したり。

頭で考えたり、決めたりしていることに日々時間が占められているようだけどそれはどのくらい本当なんだろう。写真家の星野道夫が亡くなる前に求めていた、昔生きていた人々が世界をどのように見ていたか、それを知りたい、という言葉をあらためて思い出す旅でした。

一週間くらいして社会性を取り戻すためのろのろと手紙を書いていると、どこに行っていたの、さがしていたのよ、クジラが4頭見えるよ、と教えてくれる86歳と82歳のピートとバーサ。今年も同じ場所にクジラが見える、クジラと同じような旅をしている、6度目のアラスカ。


鮭の遡上