2017年2月12日日曜日

ディーノ・ブッツアーティー『古森のひみつ』

昨年2016年に岩波少年文庫に加わった、ディーノ・ブッツアーティー『古森のひみつ』。まいりました。もう数日前に読了したのだけれど、いまだにあの物語の世界をひきずってます。退役した大佐。孤独な少年。時を刻むカササギ。深いモミの木の森。そして、いとしの風のマッテーオ。

森の奥を中心とした舞台はとにかく暗くて、寒くて、雪と風を感じる物語。でもじっと耳をすませたくなる、森や風が何を載せているのか。何も載せていないのだけど。そんな人の思惑など自然は何もおかまいなし。

みえっぱりでさびしんぼうな風のマッテーオが古森の世界の展開を知らせてくれます。こんな風の描き方もあったんだ。人の価値観に引き寄せた擬人化ではなく、という表現は何か矛盾ですが。

大佐と森の、これも擬人化ですが、駈引きも共に考えさせられます。

作者ブッツアティーが愛した北イタリアの山岳地帯を旅したくなります。今もきっとどこかにこんな古森があるはず。日本語で初訳。