2012年12月16日日曜日

アリステア・マクラウド『すべてのものに季節がある』

クリスマスを題材にした短編をひとつ。

アリステア・マクラウド『すべてのものに季節がある』(『冬の犬』(新潮クレストブックス)に所収)

カナダ東端の島で過ごした少年時代のクリスマスを、語り手が少しずつ思い出す話です。
雪に埋もれ凍りついた島では、出稼ぎ中の兄がクリスマスに帰ってくるのを家族で待っている。
兄が帰ってくると、若馬にそりを引かせて、教会へ連れて行ってくれる。そして家族へのプレゼント。

大人としての兄と姉と、下の兄弟に挟まれて、大人と子どもの間にいたときの心象風景がとても美しい話です。飼われている若馬や羊、豚、鳥たちの様子に凍れる島の冬を感じます。
どこにも静かという言葉は使われないのですが、静かな季節の光り輝くクリスマスの時間が伝わってくる作品です。