2014年4月29日火曜日

西前四郎『冬のデナリ』

今年は冒険家の植村直己が冬のアラスカ・マッキンリーで単独登頂後消息を絶ってから30年の年。植村直己の母校・明治大学で開かれた記念フォーラムに行ってきました。
会場の大教室は背広姿の白髪の人たちで占められ、壁側には北極圏犬ぞり12000キロ達成時の満面の笑顔の大型写真が降ろされています。その写真を撮った写真家も今日の語り手の一人。

話は君子夫人と山岳部時代の友人とのトークショーからはじまり、探検家・関野吉晴の基調講演、続いて垂直の時代/水平の時代の関係者の話がありました。

君子夫人の「目に星が五つもあるような人」という話や、「植村直己の友人の・・・と言われるのがくやしくてしょうがなかったが、今度生まれ変わったら植村研究をしたいと思います」と話す山岳部の同期の話。 

突き抜けた登山家・冒険家がそろい、植村直己についてぽつぽつと語り合うのを聞かせてもらえた、本当に夢のような時間。

冬のマッキンリーでの遭難者は、植村直己以外はすべて発見されているとのことでした。


西前四郎『冬のデナリ』は、冬のマッキンリー(アラスカ現地の名前でデナリ)に1967年初登攀した若者たちの話です。
この話はどうジャンル付けしたらいいのだろう。ノンフィクションですが物語りとして、筆者自身も物語りの中の登場人物の一人、次郎として描かれています。それも1967年の出来事から30年近く経っての出版。それだけの時間が必要だった。

話は登山好きの日本人学生と夢想家ヒッピーのアメリカ人がアラスカで出会うところから始まります。 冬のデナリ挑戦という構想に引き寄せられた、国籍も職業も異なる8人の若者を待っていたのは、夢など吹き飛ばす自然環境と苛酷な運命でした。デナリ頂上直下の爆風は有名ですが、「ナイアガラの滝のよう」という形容は、よく知らしめてくれます。

この本は子どもの本専門の福音館文庫(小学校上級以上むけ)として出されており、書店のアウトドアの書棚にはなかなか見当たらないのですが、世代の垣根を越えて読みつがれ語り継がれる本であるといいなと思います。運命について、それでも挑戦していくということについて知るために。