2016年4月24日日曜日

ブルーノ・ムナーリ『モノからモノが生まれる』

飲食店に入って昔ながらの布のおしぼりが出てくるとほっとする。逆に、ビニールに入った湿った使い捨てのお手拭きが出てくると、いいお店でもそれだけでがっかりしてしまう。
駅でおにぎりを2つ買ったらお会計をしているスキにおばちゃんにお手拭きを2つ入れられてしまった。そもそもいらないのに、とも言えず。

こんなことを話のマクラに使うとすごくおこられそうだ。好悪を問わず、とにかく気になったモノの観察から世界は始まるんだ、というブルーノ・ムナーリの『モノからモノが生まれる』は予想以上にキビシイ、デザインの実践的な哲学の本である。
イタリアの工業デザイナーのブルーノ・ムナーリは、その世間的な肩書とは違って、ある人にとっては絵本作家として記憶され、私にとっては何より次の言葉を残した人である――私たちは植物なしには生きられないが、植物は私たちなしでも、じゅうぶん生きていける。

モノの背後には人があり、世界があり、捨てても捨てきれないモノがあったはず。デザインの意義を考える手引きとして最適な本。