2013年2月24日日曜日

川端康成『山の音』

川端康成作品が好きという人にあまり会ったことがないのですが、私は文体が好きで時々読みたくなります。
内容全体は憶えていなくとも、ディテールの描写が強く印象として記憶に残る作家です。そしてそれはしばしば日本的な美であることが多いです。
例えば、あでやかな着物をまとった女性のまわりをひらひらと幻の蝶が舞っているようだ、といった表現(たしかこれは『千羽鶴』の中の話)。

『山の音』は少し前の日本の”家”を背景に、老年の主人公と年老いた妻、同居の長男と嫁、子どもを連れて戻ってくる娘の日常を描いた作品です。
少し前の話なのに、時代はなんと変わったことか。平屋で生垣のある家であることは大前提であり、全体的にトーンが暗く静かなのです。それを「日本古来の悲しみ」と文学上は表現されるようですが。

町から表面上は失われた「日本古来の悲しみ」を何か逆に求めて、川端文学に手を伸ばします。