2015年1月25日日曜日

イーヴ・ガーネット『ふくろ小路一番地』

イギリスの田舎町、とはいっても美しいヒースの丘が連なる、といったイメージでは語られていない、ちょっとごちゃごちゃした田舎町にいるラッグルス一家の物語『ふくろ小路一番地』は1937年に書かれ、その年の最優秀児童文学書に選ばれています。

訳者の石井桃子さんのあとがきによると、それまであった児童文学の、魔法使いが出てくる話や上流階級の裕福な子どもの話ではなく、とりあげられていなかった階級の家族のよろこびや悲しみが描かれている作品ということです。1937年という年を考えるとヨーロッパに暗雲が立ち込めていた頃と思われますが、作品は働き者の両親と子ども10人の痛快な話に終始しています。

ちょっと落語を思わせるようなテンポのよさと、愛すべき登場人物のくっきりと浮き上がる様に引き込まれます。