2015年10月25日日曜日

垣根涼介『ワイルド・ソウル』

人間の歴史の負の側面、戦争や奴隷制度や先住民虐殺等々をどう引き継いでいくか、というのはとても難しい。事実として教え教わることはできるけれど、自分に連なることとして考えて引き受けていくということになると、そこには何か”経験”が必要となってくる。

文学も、大いにその”経験”としての役割を担っている。垣根涼介『ワイルド・ソウル』で取り扱われているのは戦後の悲惨なブラジル移民政策である。からっとしたラテン気質と狂暴さと、日本の組織社会を基調とした雰囲気の対決、が物語として成功している。重たいテーマだけれど、読後感は爽快で救われた。
大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の3冠受賞。