2013年7月31日水曜日

走れヒコーキ

北米ノースウッドの自然をテーマにした写真を撮り続けている大竹英洋氏のスライドとトークショーに行ってきました。写真と映像、そして説明の構成がすばらしかったです。
秋の森、ブッシュの茂みがかさかさと揺れて何かが出てくるのを待つ映像は、静かな森の緊張を会場に再現していました。

さて、冬のノースウッドで、二人乗りの軽飛行機に乗った低空からの撮影の場面。タンデム飛行機が軽々と飛び立つ映像を目にして、鳥肌が立つような感覚を思い出しました。2012年の南東アラスカヘインズへの旅です。

アメリカ本土からの公共アクセスはフェリーか小型飛行機しかなく、フェリーは毎日就航ではないので日程上、小型飛行機(Sea Port Wings of Alaska)をインターネットから簡単に予約。当日、チェックインカウンターで体重は?と聞かれて初めてこれは何かおかしいぞ、と気づきました。

「しっかりロックしろよ!」とのパイロットの指令に慌ててセルフでドアのレバーを閉めれば、6人乗りの小型飛行機はすぐにも走り出し、がたがたと機内にいながらも地面を感じ、本当に軽々、これはかろがろ、と言いたいところ、ヒコーキは飛び立ちました。

ふらりと浮かびゆらゆらと調整を図りながら空を走っていくヒコーキの中にいて、届きそうで離れていく冬の針葉樹森と氷の景色を見つめていると、かつてアラスカに引き付けられてやまなかった人たちの思いがおしよせてきます。この、感覚はあり得ない。近づく氷河の青い縞は命のかけらもなく美しく、それでもどこかに何かをさがしてしまう。

まだ、これはこの旅のはじまりでしかなかったのですが。