2013年10月25日金曜日

志賀直哉『暗夜行路』

昔養蚕をしていたころの道具が今も天井裏に残っているらしい祖父母の家は、枠に入ったご先祖様の大小の写真が並んで見下ろす中の間が、まず玄関入るとすぐ迎えてくれるような、そんな古い日本家屋ですが、そこでいっしょうけんめい掃除をする夢を見ました。箒で畳を掃いたり、座布団をお日様の下で干さなくちゃ、と焦っています。この祖父母の家で遊んだときは子どものころのことで、そんなことはしたことはないのに。

ちょうど志賀直哉の『暗夜行路』を読んでいたのでそれが何か夢を見させたのかなとも思います。
とにかく悪い夢ではなかった。

マザコンで神経衰弱の時任謙作が随分遠くまで長いこと旅をしたり、引越しをしたり、放蕩を重ねるなど、鬱々とした日々の感情を描いている話。それにしても昔の人はよく手紙を書きます。それも長い長い手紙を。

志賀直哉が『暗夜行路』の執筆を始めたのが大正元年、29歳のときで、完成したのは昭和12年、54歳のときと年譜にはあります。その間にも他の作品は手がけているものの、ずっと時任謙作の人生を気にかけていたわけで、その事実にまた静かに心動かされました。