2012年8月9日木曜日

デュマ『モンテ・クリスト伯』

時には何日も何ヶ月も、間を置きながら読了に時間が掛かってしまう長編小説を読む喜びは、読んでいるうちに主人公の成長と変化に読み手も並走して経験を重ねて行けるところだと思います。人生の緩急を物語として感じられるのは長編小説の醍醐味です。人が変わっていくということを、長編小説は教えてくれます。

アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』は岩波文庫で全7冊ありますが、特に後半は読んでいてスピードもぐんぐん上がり、その華麗なる復讐劇に連れ込まれます。時代としては、ナポレオン時代の盛衰を背景として、フランスやイタリアの貴族社会や文化祭典状況がよくわかります。 

心理学者の河合隼雄氏が何かの本の中で、子どもの頃夢中になった本としてこの『モンテ・クリスト伯』を”モンクリ”としてあげていました。岩窟王、の名前でも日本では昔から愛されてきた本です。

復讐は神から与えられたもの、一方その復讐に神はどのくらいまかせているのか―キリスト教圏外でずっといることを理由に考えることを放棄せず、いつかまた再読したいと思います。