2012年5月26日土曜日

『記憶に残っていること 新潮クレスト・ブックス 短編小説ベスト・コレクション』

たしかバルザックの『谷間の百合』を取り上げた、学生時代のフランス文学の講義中に、主人公の夫人が湖の水面に手をひたす、の場面で先生が感極まって言葉を失う、ということがありました。
その時はただただ、大学の先生というのは変わった人がいるもんだなと思ったのですが、翻訳文学はキライ、訳がどうの、という人にその後会うたびに思い出す出来事です。
研究者としてフランスの近代小説に生涯をかけてしまう、そしてその感激も日々あたらしい、そんな人もいる。

「翻訳モノ」は日本語で読む日本の読者たちに長い間影響を与え続けてきた、その労をとってきた人たちがたくさんいた、と思います。

新潮クレスト・ブックスは、”海外の小説、ノンフィクションから、もっとも豊かな収穫を紹介するシリーズです。”(カバー裏の辞)
その創刊10周年で編まれた本が堀江敏幸編『記憶に残っていること 新潮クレスト・ブックス 短編小説 ベスト・コレクション』(新潮社 2008年)。




個人的にはこの本のおかげでアリステア・マクラウドを知りました。
いちどその世界が気に入ると同じ作家の作品を片端から読んでいくので、新しい作家の作品になかなか手が出ないのですが、この本を通じて新たな世界を知ることができました。